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       * * * 番外編「男と女の古事記伝」 * * *
              2003.7.31

 皆様いかがお過ごしですか?

 「恋歌」では恋の表現を通して、私たちが忘れてしまった日本古来の男女のあり方
や日本人の魂を取り戻し、一人一人は勿論、日本全体も元気になればとの願いからこ
のメールマガジンを配信しています。

 日本人の男女のあり方については以前『万葉集』の恋歌についての文章をタンゴ黒
猫さんが連載しておりましたが、その第二弾として、『古事記』に日本人の男女のあ
り方を見ていこうというエッセイを番外編としてスタートさせて頂くことになりまし
た。題して『男と女の古事記伝』。

 タンゴ黒猫さんによると、『古事記』は歴史書としても、神話としても面白いので
すが、男と女の物語として読んでみると、現代の私たちが失った男と女のあり方が見
えてくるではないか、ということだそうです。

 今回は8月14日からの本連載に先立ち、タンゴ黒猫さんの『古事記』との出会いな
どについて書いて頂きました。どうぞご賞味下さい。


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   なれそめ〜連載を始めるに当って


気になって気になってしょうがない本、それが『古事記』です。僕は何かある度にこ
の本の中に答があるのではないかと、この本を読んできたのですが、今回読んでいる
のは、前に『万葉集』についての連載をしている時に雄略天皇のことを書きながら、
『古事記』にはこの天皇の武勇伝よりは恋愛沙汰の方が多くとりあげられていること
を不思議に思ったからです。一般に『古事記』はそれまで各氏族ごとに存在した多く
の歴史を整理し、天皇家を中心とする歴史を編纂したものだとされてますけど、天皇
の正統性とか絶対性を主張するにしては、雄略天皇も仁徳天皇も、カッコ悪いという
か、笑えるような恋愛沙汰が多く取り上げられているのはどういうわけだろう、これ
は、いっそのこと、歴史の本というよりは、男女の物語として読んだ方がおもしろい
のではないか。そう思ってまた読んでみることにしたのです。

ところで、僕は古典を読むということに対してあまり抵抗感はないのですが、どうも
周りの人たちを見てると、古典はちょっと……という人が結構いますね。僕は同じ日
本語じゃない、と思うのですが、そういう方々はいや、日本語だけど日本語じゃない、
みたいに感じておられるようで、そういう方々と話してると結局は僕の方が特殊な人
間ということになってしまうのです。

そこで今回、自分の古典に対する抵抗感のなさ、というより寧ろ親しみを感じてるく
らいなのですが、これはどこから来るのだろうというのを、『古事記』を最初に読ん
だのが小学校の時で、何故それを手にとったかを思い出しながら考えていたのです。
そして、思い当たりました。

僕が小学校の頃、テレビの人形劇で「新八犬伝」というのをやっていたのですが、こ
れは僕らの間ではすごいブームになっていて、クラスの中でこれを見てない人はいな
いという流行りようだったのです。友だちとの話題は「ね、昨日の見た?」「あれか
らどうなるんだろう?」というのが必ず毎日のように繰り返されるのです。そう、こ
れからどうなるのか、それが知りたかったのですが、実は、僕が好きだった女の子が
その原作本を読んでいたのですね。原作本といっても子供向けに一冊にまとめられた
ものですが、それを知った僕はその子と同じ本を親に買ってもらって読みました。

その女の子とは一年生の時からの知り合いで、よく家に遊びに行ったりしてましたが、
その頃その子の家に行くと、「八犬伝」に限らず、その古典文学のシリーズが本棚に
ずらっと並んでいたのです。僕が「源氏物語」とか「平家物語」、「太平記」といっ
た古典文学のタイトルを知ったのはその頃で、その子がそうしたものを学校で読んで
る姿がまた絵になってて(と僕は惚れ惚れとしたのだ)、こうした文学のタイトルに
はその子への憧れがダブっているのですね。これまでいろんな理屈をつけて古典文学
がいかに親しみやすいものであるか言ったり書いたりしてきましたけど、実は自分が
感じてる親しみやすさの奥深くに、この子のことがあることを今回改めて気づいたの
です。好きな人が読んでるものは自分も好きになりますよね。こうした経験があるか
ないかは、古典が好きになったり嫌いになったりするのに大きいことだな、と思って
暴露することにしました。

そういうその子への憧れの中で、自分も古典文学読んでみたいという気持ちと、僕は
歴史ということにも興味がありましたから、日本最古の文学で、日本の国の成り立ち
を描いた「古事記」を手にとったのだったと思います。そしてその世界に魅せられて
いったのです。

さて、今回『古事記』を読み直すに当たって、いつもはおもしろくないと思って飛ば
していた序文から読み始めて気づいたのですが、この『古事記』の編纂を命じたのは
元明天皇なんですね。元明天皇といってもピンと来ない方も多いかと思いますが、女
性の天皇です。例の持統天皇の異母妹に当る阿閇皇女(あへのひめみこ)という方で、
持統天皇の息子、草壁皇子の妃となり、その息子文武天皇が25歳の若さで崩御された
後に天皇として即位された方です。実は、奈良遷都を行ったのも、和同開珎という貨
幣を命じたのもこの女性の天皇なのです。(僕は奈良遷都も和同開珎も『古事記』編
纂も学校で必ず習うのに、そして奈良時代と言えば聖武天皇も桓武天皇の名前も習う
のに、どうして最初の元明天皇の名前を習わないか不思議に思ってます。ひょっとし
てこの天皇が女性であるということと関係しているのか、と。)

僕は、『古事記』の持つ、男女の物語としてのどこかかわいい感じは、これが女性の
天皇によって編纂されたということと関係なくはないのではないかと思うのです。
「女性=かわいい」という単純な図式で言っているのではありません。女性といって
も為政者であり、奈良遷都なんて大事業を行うような人ですから。ただ、そこに後に
見られるような男性中心的世界観とは違う、何かがあるのではないか、命じた人が女
性であるということが何らかの形で反映されているのではないか、そう考えるのです。

こうして、僕の中では、僕個人の体験としても、歴史的な成立事情を考えても、『古
事記』から女の人との関わり抜きでこの本のことを考えることはできなくなってきた
のです。

それではいよいよ次回から、男と女の物語としての『古事記』について綴っていきま
す。どうぞお楽しみに。


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「恋歌」番外編は隔週木曜日、本編と交互に発行します。
次回をどうぞお楽しみに。。。。


*' *' *' 単行本「恋歌」情報 *' *' *'

「恋歌」が本になりました。
書店にてご購入またはご注文下されば幸いです。

●タイトル:恋歌(れんか)
●著者:恋歌編集部
●発行:新風舎
●本体価格:1,800円
●ISBN:4-7974-2794-9

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2003.7.31 「恋歌」番外編発行号


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