:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜メールマガジン「恋歌」:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜

          * * *  第6回 * * *


こんにちは。
メールマガジン「恋歌」も、6回目の発行になりました。

「恋歌」は、恋に生き、歌に情熱を託した日本人の
溢れんばかりの情緒をいま、現代に蘇らせたい気持ちから、
数人の仲間で始めた企画です。

前号まで、歌人のご紹介を兼ねての歌人特集を
お届けしてきましたが、
今号からは、毎回、テーマに添ってのものを
お届け致します。

どうぞよろしくお願い申し上げます。


さて、
第6回発行号では、

「女」として生きる、ということを
表現してみました。

日本古来からの「恋」のゆく道は、
「郡婚」に始まって通い婚である「招婿婚」へと移り、
その中で、あまたの恋が華々しく咲いていました。

武家の台頭により、
「嫁取り婚」が主流となっていき、
明治以降には、
ヨーロッパから入ってきた騎士道の
ロマンスー「恋愛」という概念に多大な影響を受け、
現在の一夫一婦制が確立していきました。

では、
わたしたちの身体には、
日本古来からの恋の血潮は、
もう失われてしまったのでしょうか。


どうぞ、ご賞味ください、、、、。

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 前 歌   「叫び」       松ノ木大宮八幡娘
        
 本 歌  「23歳の叛乱」     相模野小町
    
 返 歌  「海へと帰る」      武蔵野式部

 返 歌  「自由の風」       天の羽衣


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  前 歌


[叫び]


「じゃあね」と電話切ったあと 1時間は待ってるのだ
もしかして来るかもと 少女趣味な淡い期待を抱き
彼の家と私の家の距離 約1時間分待っているのだ
なんて滑稽 なんてまぬけなの
“ちぇーっ”て小石でも蹴ってみたい気分
やっぱり来なかったといつもの1時間後

いつから・・・・
  こんなふうになっちゃったんだろう。


もっと恋したい 身を焦がすような
もっと好きになりたい 命懸けに

きっとそれがわたしの幸せ
安住は耐えられない 生殺しと同じ

結婚もしてないのに一人の人のものになる窮屈ったら、
恋人状態でも一緒

恋を謳歌し、悩み、愛し、生き抜いた愛すべき女性たちよ
どうぞそれぞれの燃えるような人生の中で
つかんだ真理を教えたまえ!
愛することを生活の中でどう織り込んでゆけば良いのか
愛することが長く共に共有する時の中で
廃れもせず燃え上がっていくにはを


  -松ノ木大宮八幡娘-

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本 歌


[23歳の叛乱]

ただ、ひとりの女に戻りたかった。

19歳で結婚し、21歳になったばかりの冬、母になった。
母であることは、
それまで知らなかった幸せだった。
妻であることには、
護られて在ることの平安があった。

けれど、平安と幸せの片隅で、
かすかに感じていた、
わたしには、もう二度と、いのち躍動する恋は訪れないの?

それは、
あまりに寂しい、体ごと萎えていくような感覚だった。


23歳になった秋、夫とは違う人に恋をした。

夫にはすでに恋心はなかった。
いつもいつもまわりの人は、
妻なんだから、母なんだからと
世間があるんだからと
生きる役割を私に説いた。

わたしには、
役割に命を賭けることは出来なかった。

なぜ、誰かに恋してはいけないのだろう。
華やぎときめく胸の内を
なぜ、秘めておかなければいけないのだろう。

役割を説く人たちの中で、
生の自分が受け入れられないことを知ったとき
仮面を被ってしのぐようになった。
本当の気持ちは一切語らず、
ただ、求められる役割だけをこなした。

そして、
半狂乱になった。


家を出たのは、
恋を実らせたかったからではない、
ただ、ただ、ひとりの女に戻りたい、それだけだった。

好きな人を好きと言える、ただの女に戻りたかった。
家も、肉親も、何もいらなかった、
自分が理解されない環境の中に在ることは
死ぬ事を意味していた。

全て無くしても、全て振り出しに戻っても
生身のひとりの女として生きる道を選んだ。


ひとりになり、数ヶ月の後、
娘をひきとって正式に離婚した。

24歳の春、たけなわの頃だった。

  -相模野小町-

 

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  返 歌


[海へと帰る]

女として
幾多のめぐる季節を通り過ぎ
すでに華やぐ季節は終わったのかと
自分の姿を鏡に映したとき
唐突に一粒の涙が
零れ落ちてきた

あの人が好き

この気持ちを伝えずには死ねないと
身の芯からの声だった

母としての役割に疲弊して
やわらかき、うつくしき
命の泉がかれてしまっていたかのような私

でもその水は一滴の涙のように
地下にひっそりと小さな泉をつくり
流れ出るのをまっていたのだ

流れ始めた水は
留まることを知らずに
流れてゆく

あの人のもとに
あの人のもとへ
そして一つとなり
大海原へと
はるかな旅をはじめる

風景をかえながら、彩りを変えながら
流れゆく

死ぬまで女で生きること
それが私にとっての自由なのだ

-武蔵野式部-

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   返 歌


[自由の風]

初めて恋をした
体がこんなにも変わるものかと
驚いた 
嬉しかった
まっすぐ向かってゆく体

しかし、私は人の妻だった
制度と契約に縛られた心

自由になりたかった
いのちそのままで生きる自由
誰によっても所有されない体
何によっても犯されない心を欲した

私は、人の妻をやめ
ただのひとりの女になった

「大陸を渡る風のように、自由に生きなさい」
若光王碑の前
体の中で自由の風が吹いた

-天の羽衣-


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「恋歌」第6回号、如何でしたでしょうか。

生涯、ひとりの女であることは変わらない。
それが、「恋歌」のメインテーマでもあるのです。


「恋歌」は、毎週木曜日、毎回のテーマに添ってお届けします。
次回をどうぞお楽しみに。。。。


わたし達の恋歌が、あなたの恋の魂に触れたら、、、
あなたの返歌、お待ちしています。
もちろん、ご意見ご感想なども、たくさんお聞かせくださいね。


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2002.2.21 「恋歌」第6回発行号


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