:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜メールマガジン「恋歌」:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜

            * * * 第50回 * * *
                 2003.7.10
  

こんにちは。
メールマガジン「恋歌」第50回目の発行です。

恋に生き、歌に情熱を託した日本人の
溢れんばかりの情緒をいま、現代に蘇らせたい、、、

恋歌は連歌であり、
ひとりの情熱はひとりだけに留まらず
今を生きる人に必ず伝わっていく、

そんな気持ちで発信し始めたメールマガジン「恋歌」も、
皆様にお読み頂きながらこの度、50回目を迎えました。
本当に有難うございます。

折しも、読者の方から
47回号「雨」への返歌が届けられ、

第50回発行号は、
「恋歌 ― 連歌」をテーマにお届け致します。


あなたの心にもきっとある、
遠い日の濡れた情景を、、、、

どうぞご賞味ください。

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 [ 霧の雨 ]         相模野小町

[ 遠き日の哀感 ]     林 一美

 [ 情景 ]          出雲頼道

 [ 紫陽花 ]         相模野小町


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 [ 霧の雨 ]


しなやかなひとしずく
窓ガラスをつたい
指先を濡らし

紫陽花のきらめきが
胸に沁みて

ふいに蘇る
忘れていた痛み

あの日の調べが
聞こえてくる

あの遠い日も雨だった

静かに眼をひらいて
遠ざかるあなたを見ていた
瞳をそらすことなく
まっすぐに見ていた

あなたの姿が
霧のような雨に霞む街の中へ
吸いこまれ
ほんとうに
消えてしまうまで
立ち尽くしていた

雨に濡れて
風に打たれて
そのまま身体が
溶けてしまえばいいと願った日

遠いやさしい
かなしい
雨の調べ

やるせなく切なく
狂おしい記憶

一緒にいた短い時間を
遥かに超えて
今もわたしの中に
生きる人

窓の外には
紫陽花がきらめいて

霧のような雨の降る日


 -相模野小町-

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[ 遠き日の哀感 ]


紫陽花を撫でる 音の無い雨
傘も差さずに 一途に俺を見つめた
その瞳に答えられず 視線をそらした

そう あの雨の日

壊れそうな愛を 握り締めて  
失いそうな愛を 胸に刻んで

お前は なぜそんなにも俺を
身勝手で何もしてやれない俺を

いっそ 抱けたら・・・
あの霧を包むように 雨にうたれながら

そう あの雨の日

何を恐れたのか 俺は背を向けた

紫陽花を撫でる 音の無い雨
あの瞳は今 どこを見つめてる
あの瞳は今 誰を見つめてる

俺はまだ お前を忘れられずに
泣いたお前のような紫陽花を
一人 見つめる


 -林 一美-

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 [ 情景 ]


雨が降る――
あの日と同じ霧のような雨
そして紫陽花
どうしても
君のことを思い出さずにはいられない
あの日最後に見た
君の淋しそうな顔を

どんなに忘れようとしても
忘れられるはずがない
あれほど人を好きになったのも
夢中になった事も なかったもの
それなのに――

あの時 僕は振り返らなかった
じっと立ちつくす君の視線を背中に感じながら
僕は振り返らなかった
君との光あふれる日々はもう還らないのだと
今はこうするよりないのだと言い聞かせ
振り返ったらまた君を抱きしめたくなって
離れられなくなるのを 僕は怖れた
ほんとはそうしたかったはずなのに――

雨が降る――
あの日と同じ霧のような雨と
紫陽花を見ると
どうしても
君のこと思い出さずにはいられない
そんな自分に未練がましいなと
自嘲気味になったりして

そんな時見かけた君の歌
君が歌っているのは僕のことだね
君がずっと僕の中に生きてるように
君の中にも僕は生きていたんだね
僕は忘れていた何か 力強いものを取り戻した

今の僕があるのは 君と出会ったから
だからこれからも 僕の中で君は生き続ける
もう二度と会うことはないと思うけど
どこにいてもこうしてつながっている
それだけでいい それだけで幸せだと
心からそう思う

雨が降る――
あの日と同じ霧のような雨
そして紫陽花
きっと君も――


-出雲頼道-

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 [ 紫陽花 ]


もう会えないと
知ってた

恋し焦がれて
幾多の季節
それでも
もう抱きしめてはくれないと
知ってた

もう会えないこと
知ってた

感情があることを疎み
身体があることを疎み
耐えがたいやるせなさを憎んだ日

女であることを
捨ててしまいたいと願った日々

それでも
たったひとつ
あなたは
忘れてくれと言わなかった
愛さないでくれとは
言わなかった

愛したまま
会わなくなった
ただ
それだけ

しなやかなひとしずく
窓ガラスをつたい
指先を濡らし

紫陽花のきらめきが
胸に沁みて

ふいに蘇る胸の疼き

あの
身体を溶かすような狂おしさを
蹲るほどの切なさを
ひとり抱きしめる
濡れた午後

あの遠い日も
雨だった


 -相模野小町-

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「恋歌」第50回号、如何でしたでしょうか。


「恋歌」は、隔週木曜日、毎回のテーマに添ってお届けします。
次回をどうぞお楽しみに。。。。


*' *' *' 単行本「恋歌」情報 *' *' *'

「恋歌」が本になりました。
書店にてご購入またはご注文下されば幸いです。

●タイトル:恋歌(れんか)
●著者:恋歌編集部
●発行:新風舎
●本体価格:1,800円
●ISBN:4-7974-2794-9

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わたし達の恋歌が、あなたの恋の魂に触れたら、、、
あなたの返歌、お待ちしています。
もちろん、ご意見ご感想なども、たくさんお聞かせくださいね。


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2003.7.10「恋歌」第50回発行号

 

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