:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜メールマガジン「恋歌」:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜

          * * *  第3回 * * *

こんにちは。
メールマガジン「恋歌」も、3回目の発行になりました。

「恋歌」は、恋に生き、歌に情熱を託した日本人の
溢れんばかりの情緒をいま、現代に蘇らせたい気持ちから、
数人の仲間で始めた企画です。

タイトルは「恋歌」ですが、恋だけに限らず、
女という命を生きることもまた、
歌にしていきたいと考えています。
みなさまとご一緒に、日本人としての熱く美しい魂を
取り戻していけましたら大変うれしく思います。

この度、新たにお越し下さった皆様をはじめ、
創刊号、また前号よりお読みいただいている皆様にも、
改めてご挨拶させていただきます。
これから、どうぞよろしくお願い致します。

さて、
第3回発行号は、
歌人・相模野小町のご紹介とともに、
相模野小町特集をお送りいたします。

どうぞ、ご賞味ください、、、、。


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歌人・相模野小町紹介.....[寸評]

相模野小町特集   [遠い日の恋]
             [16歳の初夏]
             [綺麗なあなた/あなたに会えてよかった]
             [ 指 ]

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歌人・相模野小町紹介.....[寸評]
  *恋歌の仲間から見た相模野小町は、、、、

 深き女性の神秘、哲学を余すところなく表現する歌人 
               /武蔵野式部
  刃の切り口のような感性の持ち主。返歌が特に素晴らしい
               /松ノ木大宮八幡娘
  女であることを在るがままに享受し生きる女性 
               /天の羽衣   


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-相模野小町特集-

 [遠い日の恋]


美しい瞳だった。

薄いブルー掛かった、吸い込まれそうに深い瞳。
見つめられると、心まで見とおされてしまうようだった。

体の感覚は消えうせて、
ただ、彼とつながる瞳だけが、
わたしの実在の証しのように感じられた。

目が合った、それだけで
何日も幸せでいられた。
一言の言葉も交わしたことの無い、
誰にも語ることのない、
ただ、ただ胸に秘め続ける想い。
恋、という呼び方さえ知らなかった。

遠い憧れ、手の届かない人、
彼のまわりには、いつも華やいだ女性たちが囲みをつくり、
わたしがそこに近づくことはなかった。

すれ違うときのその瞬間、
彼の一瞬の瞳が、
わたしの体を駆け抜けていく。
切なく、狂おしく、瞳の衝撃に身を任せる時間。

大人に成りきれない少女の身体に
瞳の衝撃は容赦なく、
胸を焦がす揺らめきに身悶えした。

苦しかった。
遠くで見ているだけの恋。

たくさんの噂が身を切り刻む。
眠れない夜が続く。
なす術を知らない幼さは、
遠くを見るより 傍らに
差し伸べられたやさしい手につかまるようにと囁く。

身を切り刻む鋭さに疲れ
傍らのやさしい手をにぎり返したその後で、

彼がわたしを想っていたことを知った。
人づてに、聞いた。

わたしは、
一人、部屋にこもり、
声を立てずに泣いた。

涙は止めようもなく溢れ溢れた。
泣いて泣いてそのまま溶けてしまえたら
いいのにと願った。
生きる事が辛く悲しかった。

それから暫くして、
彼は、自分の片想いだったねと書いたノートの切れ端を
友人に託して
転校していった。

最後まで、ひとことも伝えることはなかった。
ほとばしりそうになる体の叫びを、深く深く沈めて、
初めての恋は終わった。


いまでも、
街の雑踏の中に、
あの瞳、
体を貫き、身の置きどころないほど狂おしくさせた
薄いブルーのあの瞳を探している自分に気付いて
はっとするときがあるのです。



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  [16歳の初夏]


はじめての人は、愛した人ではなかった。

女に成りたかった。
女であることの全てを、
あますところ無く知りたかった。

愛していなくても、
躰がしあわせという状態を知った。
愛とかけ離れた身体の関係があることを知った。

甘美な、とろけるような、
けれどその時だけのしあわせ。

先のなさに気付くまで、数ヶ月を抱かれ続けた。
身体が女であることの悦びと、
倦怠に包まれた悲しみと。

ずっとこの感覚に
左右されて生きていくのだろうかと
不安だった。
この悦びから
離れられないのではと
怖かった。

深まる秋、
ようやく空気の澄んでくるころ、

悦楽を捨てても、
わたしを振りかえってもくれなくても

ただ、純粋に愛したいひとに出会った。

一点の染みもなく愛せる人。
その人を愛して、ただ愛したくて
それまでの関係をやめた。

やめられたことが嬉しかった。

心底愛する喜びの方が
勝(まさ)っていたことに安堵した。


若い魂のかがやける歓喜、その中にも、
愛と性、
ふたつのものが
命在るかぎり私のテーマになっていくであろうことを
身の内の深みで感じていた。



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[綺麗なあなた]


ほんとうに気持ちがきれいだったひと

語る言葉のひとつひとつが
清い水の流れのように
わたしの心を洗い流した

美しいひとを愛すると
愛した人間の生命までもきれいになる

綺麗であること
美しいこと

会うたびに
はっとするほど輝いて
そしてもっと好きになった

人は人の美しさにこそ
すべて賭けて 愛していける

いのち預けていけることの
幸せ

そんな人に出会えたことの
幸せ

[あなたに会えてよかった]


愛することを
禁じられずに生きていける
それだけでよかった

応えてくれることはなくても
わたしが愛する事を赦してくれる
それだけで満ち足りていた

求めず愛するその広がりと豊かさを
ただ好きと言えるよろこびを
心が自由であることの幸せを
初めておしえてくれた人

あんなにも好きになれる人に会えてよかった
生まれてきてくれてありがとう


今は遠い空の下のあなたへ
生きている間に 伝えたい気持ちです

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[ 指 ]


好きな人の指、という
ただそれだけで
こんなにも肌が変わってしまう

少しの動きも
どんな微かな感覚も
すべて逃さないように

余すところなく感じたくて
刻みつけたくて
開いていく

どこまでも敏感になる
限りなく透明になる

濃密なひととき

- 相模野小町 -


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「恋歌」第3回号、如何でしたでしょうか。
次号は、松ノ木大宮八幡娘特集をお送りいたします。
どうぞお楽しみに。。。。

わたし達の恋歌が、あなたの恋の魂に触れたら、、、
あなたの返歌、お待ちしています。
もちろん、ご意見ご感想なども、たくさんお聞かせくださいね。

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2002.2.8 「恋歌」第3回発行号



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