:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜メールマガジン「恋歌」:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜

          * * *  第25回 * * *


こんにちは。
メールマガジン「恋歌」、25回目の発行です。

「恋歌」は、恋に生き、歌に情熱を託した日本人の
溢れんばかりの情緒をいま、現代に蘇らせたい気持ちから、
数人の仲間で始めた企画です。

今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。


さて、
第25回発行号は、
「晩夏」をテーマにお届けいたします。

気がつけば、
灼熱の太陽は遠くなり、
一年で最も華やかに輝く季節が
あと一片で終わっていこうとしています。

みなさまの夏は、いかがでしたか?

最後の夏のひとしずく、
その切ない残り香を、

どうぞ、ご賞味ください、、、、


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 天の羽衣   [夏の終わりに見た夢]

 相模野小町  [晩夏]

 出雲頼道   [もう、あそびは、おわり]

 武蔵野式部  [夏の終わりに]


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[夏の終わりに見た夢]


熱にうなされ夢を見る
初めてなのに知っている
やさしく抱きしめても夢
緑広がる道を歩みくる
すでに忘れたぬくもりが
よみがえる
千里の道を歩みくる
なれたぬくもりにやすらぎ
深い眠りにつく
そして夢のまた夢
あなたはどこからやって来たのでしょう
今度会ったなら、、、という
初めてなのに知っている
夏の終わりに見た夢


 -天の羽衣-


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[晩夏]


西の空に
刻々と陽が沈みゆく
その刹那

大空が
茜色に燃えあがる一瞬がある
雲の陰影そのままに
西空一面に
茜の炎が燃えて広がる
ただ一瞬がある

いつか見た
夕暮れ

幼い日
時の経つのを忘れて遊んだ
優しい波打ち際

あの夏の日は
魔法にかかったように豊かだった

てのひらから落ちる砂の間に
妖精が見えた
きらめく波と藍空の間に
天使が遊んでいた

日がな一日
こぼれる陽の中で揺られ
やがて訪れる明日に恋をして
ゆっくりと満ち足りて
夕暮れを迎えた

西の空が一面に燃える夕暮れを
あの遠い夏の日にも見ていた

長い季節(とき)を生きる中で
どれだけの悲しみがあるかを知らず
大切な人との別れなど
予感することすらもなく

あの空のように
茜色は刹那と過ぎることにも
気づかず

今 想う
胸詰まるほどの
懐かしい波打ち際を
あの輝かしい夏の日を

失ってしまうなら
もっと大切にすればよかった
あんなにも突然に
手のひらから零れ落ちて
遠くにいってしまうのを
知っていたなら


 -相模野小町-


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[もう、あそびは、おわり]


みんみんと疲れたように鳴く蝉の声を聞きながら
夜の涼やかさを増す虫の声を聞きながら
そして あと二週間しか残っていない8月のカレンダーを見ながら

思う

時間がない……

何をそんなに焦っているのだろう

あなたと過ごす夏の夜はあまりにも早く過ぎ
手で水を汲んでも指からこぼれる水をどうしようもないように

性急だとはわかっていても
刹那的だとはわかっていても
無性に あなたを 求める
まるで明日にも全てが終わってしまうかのように

誰かの声が聞こえる
もう あそびは おわり

子供の頃のように
夏休みの終わりと共に楽しい時間は過ぎ去っていく

そして
つまらない同じ事の繰り返しの生活がまた始まる

あなたとこうして楽しい時間を過ごしていることは
遊びに過ぎないのだろうか
単なる気晴らしに過ぎないのだろうか
厳しい現実を忘れ 逃れるための

たとえそうであったとしても構わない
僕は厳しい現実に反旗を翻す
遊びであればこそ 夢であればこそ
あなたとのこのひとときを大事にしたい
もう 再び訪れることはないかもしれない
このひとときを

少しひんやりする夜の闇に消えていく
あなたを見送りながら
僕はそんなことを感じていた……


 -出雲頼道-


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[夏の終わりに]


その海辺のちいさな駅におりると
君が笑顔でまっていた

台風が近づいている風

灰色の雲の合間から
暮れなずむかすかな明るさが差し込んでいる

むせ返すような潮の香りに
何年かぶりの海の記憶が蘇る

夜の海の
暗い闇の中で潮騒のざわめきを
聞いてみたかった

そんな私の気持ちを
君は叶えてくれようとする


眼下には漆黒の海

浜辺に降り立つと
今日はすこし荒れてるなと言いながら
君はどんどん海に入って行く

風が吹き、波が立つ

私は激しく打つ波にそのまま吸い込まれ
暗い海にのみこまれそうだった

まるで一人になってしまう瞬間
ごうごうと鳴る海鳴り

波のうねりに負かされそうになったとき
君が私の手を掴む

荒波の中、暗闇の中
君の手の感触だけが私を繋ぎ止めている

ひとすじのあたたかみ

うれしかった
君がいてくれる

いつのまにか鼓動が走り出し
海の奥から聞こえてくる響きと
重なり合ってゆく

風が吹く
稲光

半月の月が雲間から見え隠れ
まるで夏を連れ去ってゆくかのような風
走る波

夏の終わりの日に
君と二人
この壮絶な神秘の海に溶けていく


-武蔵野式部-

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「恋歌」第25回号、如何でしたでしょうか。


「恋歌」は、隔週木曜日、毎回のテーマに添ってお届けします。
次回をどうぞお楽しみに。。。。


わたし達の恋歌が、あなたの恋の魂に触れたら、、、
あなたの返歌、お待ちしています。
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2002.8.22 「恋歌」第25回発行号


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