:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜メールマガジン「恋歌」:.。.:*:・' :.。.:*:・'゜

          * * *  第11回 * * *


こんにちは。
メールマガジン「恋歌」、11回目の発行です。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。

「恋歌」は、恋に生き、歌に情熱を託した日本人の
溢れんばかりの情緒をいま、現代に蘇らせたい気持ちから、
数人の仲間で始めた企画です。

毎回、テーマに添ってのものを
お届けしています。

これから、様々な企画をしていきますので、
どうぞよろしくお願い申し上げます。


さて、
第11回発行号は、
満開の桜に因んでお届けします。

一年、待ち望んだ春を
満開の桜にて迎えるとき、
すべての人が花に心開いて和み、
優しさを取り戻していくかのようです。

あまりに目に美しく、
胸に哀しい桜の姿を、
太古の昔から日本人はこよなく愛してきました。

さくら、さくら。

愛しい桜によせる恋文を、

どうぞ、ご賞味ください、、、、。

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[花宴]      松ノ木大宮八幡娘

   [夜桜]      天の羽衣

   [桜]       武蔵野式部
 
   [うすずみの桜]     相模野小町

   
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[花宴]


古い城跡の公園
みごとな枝ぶりを競い合う桜は
2700本にも及ぶという

夜になれば提灯があたりを照らし
薄紅の花霞(はながすみ)に古城が浮かび上がる

足の踏み場もないほどに繰り広げられる酒盛り
笑い声とともに何処からか横笛の音も聞こえる

人々は待ち焦がれた春を謳歌しそぞろ歩き
恋人たちは手をつなぎ桜のアーチをくぐって歩く

桜と酒宴に縁取られた小径は
何処までも続いていく

池の水面に挑むように迫る枝ぶりの桜
水面に映されてかすかに揺れる月と花霞

宴の喧騒の中
手をつなぎながら考えてた

叶うのなら
もっと貴方を愛せたらよかったのにと

見事な花宴の美しさは
心の隙間を際立たせた

しなやかな筋肉のついた浅黒い肌に
どんなに愛されても
なにか満たされなかった

子供を望む貴方に
身を委ねられぬ想いは強くなる

いつかこの地を去る時がくると


雪深い土地柄ゆえ
春の喜びはひとしお
毎年人々はそぞろ歩き
うたをうたう

そして私は思い出す
あの花霞の景色の中

夢のような宴の小径を歩いたことを
今ごろ父親になってるでしょう貴方の事を

  −松ノ木大宮八幡娘−

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[夜桜]

伸びやかな桜の木の下
君と抱き合う
いとおしく
どこまでも優しく
冷たい夜風も感じず
暖かかった

「肝臓暖めて」と君が言った
心をこめて暖めた
「あったかい」と君は言って
いつものように
私の体が抱いてほしいように
抱きしめる
体中の力が抜けてしがみつく

君の肩越しに
美しく輝く月
八重桜満開の夜

  -天の羽衣-

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[桜]

わたしはサクラの花びらが
静かに落ち始める日が好きだ

満開の瞬間のあの静けさが好きだ

音も無く落ちる花びらに
日本のこころを見る

咲ききって尚静かな桜
美しく清く散る

優しい暖かい悲しい
命そのもの

-武蔵野式部-

 

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  [うすずみの桜]

散りぎわに
墨絵のような夢幻の色彩を残して

年に一度の華を仕舞う桜
千五百年もの時を
生き抜いた古木

夢の中であなたに逢い
夢の彼方から恋われるように

夢から幾年を経て
散る間際のあなたを訪ねた

樹木深く
眠るような深い谷の底
いくつもの漆黒の山を抜け
幻の中に迷い込んでいくひととき

あなたの気配で満たされている谷に
立ち尽くす

闇の中に
息を呑むほど艶かしいあなたの姿があった     

太くずっしりと濡れた幹の
静かなる命の息吹
            
大地に溶けた谷の哀しみを
根からわが身に引きうける姿

枝々は時の重みに耐えかねるように垂れ
深い哀しみを慈しみへと変えながら
淡い墨色の麗花咲く          

あなた

妙(たえ)なる淡墨(うすずみ)の桜

靄で濡れる山肌に
溶け入るように命を咲かせ
その身に纏う遥かな時間

あまたの生命が逝くのを見つめ
唯ひとり残り
永い永い時を生きた巨木

散りゆくあなたの            
溢れるような美しさ
触れる木肌の
染み入るような温かさ

あなたの大きな懐に抱かれながら      
身に流れ込んでくる慈しみに
言葉を逸して立ち尽くす
胸詰まるような至福のひととき      

山間の空が白みはじめ

あなたの木肌に
命の脈動を感じ始める

やがて
谷に陽が昇り
夜の闇を解いてゆく瞬間

あなたはその身に光を受け
まばゆいばかりに輝きを放つ
花びらは黄金の衣となり
やがて乳白の陽に溶けていく

今このときを過ぎれば
うすずみの花は終わり
山肌は深い緑へと彩りを変える

あなた

妙(たえ)なる淡墨(うすずみ)の桜

年に一度の華を仕舞う
仕舞いながら
逝き過ぎたあまたの命を慕い
また来る年の逢瀬を遥かに想う


幻を見たかのようなひととき

散りぎわに
墨絵のような夢幻の色彩を残して

深い谷の底に濡れてたたずむ
うすずみの桜

-相模野小町-

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「恋歌」第11回号、如何でしたでしょうか。


「恋歌」は、毎週木曜日、毎回のテーマに添ってお届けします。
次回をどうぞお楽しみに。。。。


わたし達の恋歌が、あなたの恋の魂に触れたら、、、
あなたの返歌、お待ちしています。
もちろん、ご意見ご感想なども、たくさんお聞かせくださいね。


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2002.3.28 「恋歌」第11回発行号



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